行くぞ甲子園


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27 August 2024

神業のバントヒットの裏側の攻防をよむ  8/26/2024

*先日の大社高校の安松選手が絶妙のバントを決めた場面であるが、早実の守備にもまた質の高い駆け引きが行われていたのでそれを解読してみようと思う。

タイブレークのように、守備側がバントを絶対にさせたくない場合に用いるのが、通称「ブルドック」と言われる内野シフトである(下図)。これは、三塁手と一塁手が投球と同時に猛ダッシュしてバントした打球を捕球し三塁で刺す作戦であるが、其の為に遊撃手はガラ空きとなったサードベースへ、二塁手はファーストベースへ投球と同時にこれもダッシュする。この内野手の大きな動きを矢印の線で表した場合に、犬のブルドックのしわのある顔に似たようなイメージになるためにこのような呼称があるらしい。


この時に、二塁ランナーは完全フリーとなるため、つい普段より大きいリードを取りがちである。何しろ目の前で遊撃手と二塁手が自分から遠ざかっていくのだ。早実は、その二塁ランナーの油断をついて、牽制死を狙う作戦を見せた。詳しく見ていく。(動画はK.Baseball様のをお借りしました https://www.youtube.com/watch?v=0DZfWF6eYDU&pp=ygUG5a6J5p2-

安松選手への第一球、三塁手、一塁手、遊撃手(およびここでは確認できないが二塁手)がブルドックを仕掛ける。安松選手は、ピッチャーの投じた球が低いボールだったためにこれを見逃した(あるいは相手側がチャージしてくるので見送った、もしくは相手の出方を見る目的で、大社側は一球待てのサインをだしていた)。


二球目、遊撃手が素早く三塁へダッシュする姿を二塁ランナーに大袈裟に見せつけると同時に、三塁手と一塁手はオトリの猛ダッシュ、すかさず二塁手が背後からスルスルとセカンドベースに入り、ピッチャーはセカンドへ牽制、しかし大社のランナーはこれに騙されずに帰塁した。

では、投手はどのようなタイミングで二塁へ牽制するのか?これはおそらく、二塁手のセカンドベースへの到達のタイミングを捕手が判断し投手へサインで指示している。よく捕手のミットの動きに注意して欲しい。ミットが一瞬下を向いている。この画角では良く見えないので別角度から、


ミットが下を向いた瞬間に投手は即座に牽制する仕組みを取っているのだ。

このブルドックシフトはバントしてきた場合は大きな効果があるが、センター方向ががら空きになる欠点がある。その為、打者はもしこのシフトに直面した場合、バントの構えからバスターに切り替え、ただジャストミートでセンター返しをしてやればヒットの確率は高まるだろう。今大会決勝で京都国際の代打西村選手がこの似た局面でバントの構えからジャストミートの左前打を放って勝利につなげている。

ここまでの駆け引きで、相手が強打で来るかバントで来るか判断できない早実はここで普通の守備に戻った(あるいは初めからブルドックは「ふり」だけで、二塁での牽制死を狙っていた)。安松選手は、一塁手はまだチャージをかけてくるが、三塁手が来ないのを見て三塁側に落ち着いてバントを転がした。安松選手のバント成功にはこのような相手の守備の動きをみた冷静な状況判断があったはずである。

特にタイブレークなどの重大な局面では、無闇矢鱈に初球から送りバントということではなく、相手の動きに合わせたバント・バスターの自主的な判断をチームで有しているかどうか、この点も勝利への大きな要素になるだろう。

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