聖和学園が仙台育英の壁を破った。見事な試合だった。県内の高校生は、この試合を初回から何度も何度も見たほうが良い。仙台育英を倒すヒント満載の試合である。これまで宮城の高校は、パワーで負けまいとして同じ失敗を数十年に渡り繰り返し、代表権をほぼ仙台育英に独占させてきた。
聖和が勝ったのは決してパワーではない。野球脳、野球の頭脳である。しかも選手全員が徹底して指導されているようだった。
対する仙台育英は、焦って最後までパワーで難局を切り開こうとして、低反発バットの特性を考慮せず、凡フライの山を築いた。
これは宮城県の高校野球史においても革命的な勝利であるように思う。聖和学園あっぱれと言いたい。19安打で仙台育英を圧倒しての勝利、このような仙台育英の敗戦は宮城においては数十年記憶にない。
筆者が思う聖和学園の勝利の要因を少し上げてみようと思う。
1. 初回先頭打者三浦選手の粘り。三浦選手は野球センスの塊のような選手で、初回、ボール球には手を出さず、追い込まれてからファールで粘りに粘って11球山口廉王投手に投げさせた。途中から廉王投手の顔色が変わり、やりずらさを感じているようであった。
初回の攻撃のセオリーは、絶対早打ちをしない。ボールをよく見極める。軽くバットに当ててファールで粘る。初回はヒットはいらない。球筋を良く見極め、頭にインプットし、できれば四球で出塁する。2ストライクまで全員手を出すなと指令を出してもいいくらいに思う。
相手投手にとってもっとも恐怖なのは、粘られることである。これが催す精神的疲労はヒットを打たれるよりよほど大きいものである。何を投げても打ち取れない。疲労が増してゆく。
ボクシングにたとえれば、初回はジャブで相手との距離を測り、攻撃はボディ一辺倒、相手投手のスタミナを奪うのである。
2. 聖和は初回から盗塁を仕掛けた。相手は仙台育英の強肩捕手、アウトになったが聖和は大胆にも盗塁を狙ってきた。育英の強肩捕手は、一瞬「走ってくるのかよ」ととまどったような動きを見せた。矢のような送球で刺しはしたが、色々やってくるぞこれはと警戒心を強めたと思う。それだけで十分、以後ランナーが出れば、単に送りバントを警戒して前進守備を取ればいいというのではなく、盗塁もあるぞと警戒する必要があり育英は大胆なシフトを取れなくなった。
3. 軟投派の斎藤投手の起用。パワー野球で全国を制覇した仙台育英、速球にはめっぽう強い。解説の方もおっしゃっていたが、条件反射で対応できるレベルに速球は対策している。しかし、聖和の齋藤投手は、横手投げから切れ味鋭いシンカーとスライダーをコーナーに投げ分け、育英打線を翻弄した。仙台育英は、これまで使用してきた飛ぶバットとパワー野球から意識が脱しきれておらず、またリードされた焦りから、ひっぱって長打を打とう思いすぎて、ことごとく浅い外野への凡フライに終わった。
4.聖和のバッテリーは育英の盗塁を許さなかった。これまで、育英の大勝の試合の多くは、無策で盗塁をさせ放題だったことにあるのは明らかである。1,3塁なら必ず2塁に走ってくる。これでワンヒットで2点、それを数回繰り返してコールド勝ち。聖和の斎藤投手は、鋭い牽制で育英の盗塁を許さなかった。盗塁させないことが育英に勝つ秘訣であることを良くチームが知っていたのである。
5. 打者は逆方向へコンパクトに打つ。試合序盤、聖和打線はことごとく逆方向へミートして野手の間を抜けてヒットにした。19安打も打ったのはまぐれでも運でもなく、このやり方で日常の練習を徹底しているからである。バントを決めれるようにバント練習をするように、逆方向への意識を徹底して練習しているはずである。
6. 山口廉王投手は外角低めの直球の精度が高くない。こういう投手は、初回からできるだけ投げさせるのである。コントロールが良くないので自滅していくケースが多い。現に初回聖和の打線に必要以上に球数を放った山口投手は、初回こそ快速球を投げていたが、2回以降スピードがガクンと落ちた。
野村克也も言っている通り、好投手の生命線は外角低めの直球がいつでも思い通りに決まるかどうか。浮ついた150km/hはいらないのである。外角低めの直球ならば、130km/hが140km/hに感じる。直線的な目線で一番遠いポイントであるからだ。
好投手と全国的に話題になる場合、筆者はこの外角低めの直球の精度をみることにしている。ここに思うように決まらない速球投手は、噂されるほどではないケースが多い。大魔神佐々木はフォークのみならず、この外角低めの直球の精度がピカ一であった。よってフォークもあれだけ生きたのである。
聖和学園優勝を伝える号外
昨夏甲子園準Vの仙台育英を撃破 聖和学園、初の甲子園切符! 先発の斎藤佑樹が力投/宮城 日刊スポーツ
<全国高校野球選手権宮城大会:聖和学園8-5仙台育英>◇23日◇決勝◇楽天モバイルパーク宮城
聖和学園が昨夏甲子園準Vの仙台育英を破り、初の甲子園切符をつかみ取った。先発の斎藤佑樹投手(3年)が7回途中まで力投。打線は1点ビハインドの3回無死一、三塁で遠藤翼捕手(3年)のスクイズで同点。なおも1死満塁のチャンスで、大場橙弥内野手(3年)の左犠飛で勝ち越しに成功するなど、3点を挙げ4-2。その後も追加点を重ね、仙台育英の追い上げを振り切った。聖和学園は今春宮城大会準決勝で敗れたリベンジを果たした。
先発した斎藤は6回2/3を4失点と、強力打線を相手に粘り強い投球を見せた。06年夏の甲子園でエースとして早実を初優勝に導いた元日本ハムの斎藤佑樹氏(36)と同姓同名。同氏は早実時代、マウンドで汗をハンカチで拭う姿から「ハンカチ王子」の異名を取った。“東北の佑ちゃん”はハンカチこそ持っていなかったが、本家さながらにピンチの場面でも涼しい表情を崩さずに投げ続けた。
「佑ちゃん」が優勝投手に輝いた06年度に生まれた。「家族は野球をやっていないので、画数が良くてこの名前(佑樹)になった」。同姓同名の偉大な先輩に「甲子園で優勝を経験しているので尊敬している」。聖地への切符をつかみ、今度は「佑ちゃん」と同じマウンドで腕を振る。
「甲子園でも一戦必勝」JR仙台駅前では号外 甲子園初出場を決めた聖和学園 KHB東日本放送
夏の高校野球宮城大会の決勝で仙台育英に勝利し、甲子園初出場を決めた聖和学園の選手たちは閉会式終了後、家族や在校生に初優勝を報告しました。
三浦広大選手「皆さんの応援のおかげで優勝して、甲子園に出場することができます。甲子園でも一戦必勝で全力で頑張りたいと思います。応援よろしくお願いします」
創部20年目で初優勝に導いた八島知晴監督は、感謝の言葉を述べました。
八島知晴監督「長い年月の中でチームに関わってくれていた方々、チームに愛情を注いでくれた方々のおかげで優勝があったと思います。本当にたくさんの方々に力をいただきました。本当にありがとうございました」
硬式野球部が拠点を置く仙台市太白区の聖和学園の三神峯キャンパスには、甲子園出場を祝う大きな垂れ幕が取り付けられました。
JR仙台駅前では、聖和学園の優勝を伝える新聞の号外が配られました。
「仙台育英が勝つかなと思っていて残念ではありますが、聖和学園も頑張ってほしいですね」「育英に勝った聖和には今後勝ち進んで、甲子園の優勝旗を東北に持って来てもらいたいと思います」「まさか大番狂わせがあるとは思いませんでした。初優勝おめでとうございますっていう感じ」
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