*今年の育英を見てると明後日の優勝戦に期待が持てそうな気がする。今年の育英は一味も二味も違う。一体何が違うのだろうか?
筆者の気づいた第一は、攻撃における積極的な打撃だ。無死一塁から悉く犠牲バントをしないで強打で攻めて成功している点である。例を挙げて見ていこう。ノーアウトからランナーが1塁に出た場合の育英の作戦だ。
鳥取商戦
1回裏
橋本:センターへのヒットで出塁 1塁
走者橋本:盗塁を試みるもアウト 1アウト
住石:空振り三振 2アウト
秋元:ショートへの内野安打 1塁
斎藤陽:ショートゴロ 3アウト
6回裏
住石:フォアボールを選ぶ 1塁
走者住石:すかさず初球から走って盗塁成功 2塁
秋元:送りバント 1アウト3塁
斎藤陽:1アウト3塁の0-1からレフトへのタイムリーヒットで仙台育英先制
- 橋本:四球 1塁
- 山田:レフトへのツーベース 2,3塁
- 森:0アウト2,3塁の2-1からセンターへの犠牲フライを放つ
- 育英先制
- 7回裏
- 森:ど真ん中の変化球をレフトへ打ってヒット 1塁
- 遠藤:サードゴロ 1アウト1塁
- 秋元:セカンドゴロ 2アウト2塁
- 岩崎:2アウト2塁からセカンドゴロ 3アウト
準決勝 聖光学院戦
この夏、仙台育英は無死1塁の局面で、犠打を使用していない。高校野球においては、これまで、無死一塁の場面では、送りバントでランナーを得点圏に進める、これがいわば第一の常套手段(セオリー)であった。強打してゲッツーを喰らうよりも、確実にランナーを(1アウトと引き換えに)2塁に進めるという考えだが、果たして、これは本当に理に適った戦法なのであろうか?
以前の投稿でも書いたが、本場のアメリカでは、この戦法は「常識外」である。みすみす1アウトをタダで献上する悪き戦法であって、得点能力を高めることにはつながらないと結論づけている。これは長年のデータ集積の上での結論である。
実際、守備側にしても、3つ取らなければならないアウトの1つを、送りバントで一つ取れることは、精神的に非常に楽になるはずである。次打者に投手が四球を出さないとも限らない。コントロールの定まっていない投手に対しては、犠牲バントは安易に立ち直るきっかけを与えているだけかもしれない。
送りバントならば、ヒットエンドランの方がよい。あるいは、アウトになっても盗塁を積極的に仕掛けるのも手だ。高校生ならば、強肩の捕手でも、百発百中二塁で刺殺できるとは限らない。下手するとセンターに抜ける暴投で一気に三塁を陥れることができるのだ。
消極的な犠牲バントよりも、積極的な攻撃で相手にプレッシャーを与え続ける、たとえ結果がアウトになっても構わない、みすみす1アウトを献上するのではなく、走塁を絡めて相手を絶えず揺さぶっていく、これがその後の試合展開に影響を与えていくという考えに立っている。
仙台育英はこの夏、波状的にこの積極的な作戦を仕掛け続けている。犠牲バントをしない。強打、盗塁、それが序盤から悉く奏功して、無死2、3塁などから着々と加点して行っているのである。これは守備側にしても、極度の精神的疲労を蓄積していくことになっているだろう。
以前は仙台育英といえども、お決まりの犠牲バントを確実に決めてランナーを2塁に進めるという作戦が多かったように思う。たとえば弱いチームが、強力打線の仙台育英と試合をする場合、送りバントをしてくれた方がどれだけ楽になるかを考えて見れば良い。
第二に、選球眼が非常に良い。特に落ちるボールに引っかからず振らないので、好投手でも苦しいカウントを強いられている。これは、普段からこのためだけの「見切り」の練習をしているのであろう。
第三に、ほぼ全員コンパクトに逆方向中心に叩きつけて打っていることだ。1発長打を打つ打者がいない。地味に塁間を鋭く抜けている打撃が目立つ。
最後に言わずもがなの点では、投手陣が豪華だ。これは、就任当初より須江監督が口にしていた全国制覇をする為に必要な要件ということなのだろう。
聖光学院はエースの佐山投手が初戦から当たっていれば、ここまで大差にならなかったであろう。この準決勝では疲労が見えた。ただそれにしても、仙台育英のこの夏の攻撃力は目を見張るものがある。
明後日の決勝戦、仙台育英はどのような戦い方をするだろうか。ぜひ初の大旗を宮城に持ち帰ってもらいたい。
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