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明治神宮野球大会決勝 好投手の攻略:広島商の戦術 11/28/2024



 

1回表 広商の攻撃

*明治神宮野球大会決勝、横浜と広島商業の決勝は見応えのある好試合だった。公立とはいえ、過去の全国甲子園大会優勝の実績が私立を含めても際立っている伝統校、広島商。対する横浜は今大会屈指の好投手の呼び声高い織田翔希投手が登板、かつて、怪物江川卓を攻略したこともある伝統の広商野球がこの評判の好投手をどう攻略するか、筆者は特に、広商の初回の攻撃に注目していた。

初回、織田投手は広商の1番から3番まで3者連続三振に斬ってとった。直球も走っており、コントロールも抜群で、噂通りの好投手だ。だが、筆者はむしろ、広商の三者三振の方にさすが広商と感心させられたのである。3人とも追い込まれるまで体の重心をピクリとも動かさず球筋をきっちり見極めている。直球、カーブ、早打ちを禁じて、3人とも織田投手の持ち球の軌道をインプットしているように思われた。願わくはカットでファールにしてもう少し球数を放らせたかったが、三振しても良いという指導が徹底しているためか、悔しい表情も見せずにベンチへ戻っていく。初回はじっくり球筋を見る球数を投げさせる、これが広商の作戦であったと思われる。

筆者が考えるに、評判の好投手と対戦する場合、初回の早打ちは最も意味がないという意味で厳禁である。好投手の序盤の球威を考慮した場合、確実にミートして安打を稼げる確率は単純に考えて、低い。早打ちに出た場合、2打席目も初見の球種に相対することになる。それならば、初めての打席で速球、変化球の持ち球を全て放らせて、次打席以降にそのインプットした情報を活用した方が安打の確率は高くなる。どんな好投手でも、球数を放ることで、100ある力が90にも80にも減っていく。序盤はとにかく球数を放らせて、球筋を頭に叩き込むことに専念する。

昔、花巻東にカットでファールにする名人、千葉翔太という選手がいた。甲子園で議論になったが、あれは生半可な技術ではない。好投手が最も苦手にするトップバッターの要素を持っていた選手である。先頭打者は、出来ればフルカウント(5球)以上投げさせる工夫がいる。出鼻にやりづらさを相手投手に植え付けられるかどうか、これが後々投手の精神的なスタミナをも奪っていく。

果敢に走る広島商業の野球


織田投手は、ドロップのような変化球の落差も抜群で、広商打線は試合終盤まで捉えきれない。しかしながら、エラーや四球でランナーが出ると、次々に二盗を試みた。普通、点差が4点も開くと、盗塁はむしろ禁じ手だが(おそらく広商はこの決勝に限らず、この先を見ているのだ)、広商は伝統の足を使った攻撃を次々に仕掛けた。対する横浜の駒橋捕手も強肩で何度も刺殺したが、それでも広商は怯むことなく走ってくる。このような徹底して足を使う攻撃に対戦相手も恐怖を感じるはずである。惜しむらくは、盗塁を刺された投球が全て捕手が送球しやすいウエスト気味の直球だったことで、これがもし織田投手のランナーを背負った時の癖を見抜いて、変化球と読んだ時にスタートしていれば、成功率はもっと上がっただろう。

しかしながら、さすが広商と思わせる伝統の攻撃スタイルで、昭和48年選抜準決勝、怪物江川から奪った決勝点は、2アウトから意表をつくダブルスチールで捕手の悪送球を誘ったものであったし、ノーヒットでも足を絡めて得点していくのは広商の真骨頂、わずか2安打で作新江川を倒したのである。その時の広島商金光選手の回想、

以下、Number Webより抜粋

https://number.bunshun.jp/articles/-/851799?page=4

「(対江川の)戦略は、前半はウェイティングによって球数を費やさせることと、5回以降は機動力を使っていくことの2つ。 (略)


この横浜との決勝戦、広島商業は伝統の教訓に従って試合を進行していたことになる。



9回、織田投手を追い詰める広商の攻撃


最終回、あと1点及ばなかったが、広商の打線はこれまで見極めた球筋を逆方向へミートし始めた。織田投手は1塁にランナーを背負うと盗塁を警戒して直球が多くなる傾向がある。このような細かい点を試合中に分析していくこともまた試合に勝つ重要な要素となる。8、9回にかけて初回に3者三振を喫した広商の1−3番は織田投手から全員芯で捉えるヒットを打った、この点も広商の野球脳の高さ、底知れぬ伝統の強さを物語っている。



さらには、3回、4点を先制されて変わった広島商片岡投手、緩いカーブをコースに投げ分け、120キロ台の速球で強力横浜打線を7回まで完全に抑え込んだ。飛び抜けた選手はいない、が個人個人が「野球をよく知っている」という状態で、質の高い野球を展開している

広島商はこれだけ全国優勝の経験がありながら、なんと明治神宮大会は初出場ということに驚いたが、なるほど、それだけ夏に向けて組織的にチーム力を上げてくる伝統が深く根付いているのだろうと思った。




第55回記念明治神宮野球大会

【神宮大会】伝統の「広商野球」を披露して準優勝 春1度、夏6度の全国優勝を誇る「古豪復活」を印象づけた大会 (週刊ベースボール ONLINE)


3年ぶりのセンバツ出場は当確の立場


11月25日 神宮
【第55回記念明治神宮野球大会】
▼決勝(高校の部)
横浜高4-3広島商高

 第55回記念明治神宮野球大会の高校の部の決勝が11月25日に行われ、横浜高(関東地区/神奈川)が27年ぶり2度目の優勝。初出場の広島商高(中国地区/広島)は序盤の4点ビハインドから終盤に追い上げたが、1点及ばなかった。今大会3試合で伝統の「広商野球」を披露。春1度、夏6度の全国優勝を誇る「古豪復活」を印象づける大会となった。

 広島商高サイドの三塁内野スタンドで後輩たちの活躍を見届けたのは、2022年から広島商高校長、広島県高野連会長の折田裕之氏である。同校OBで広島商の高野球部を監督として5年率い、1998年春のセンバツへ導いた。現チームを率いる荒谷忠勝監督は、高校時代に授業も担当していた教え子にあたる。

「真面目な男で、真っすぐな性格。妥協を絶対に許さない。器用か不器用な選手かと言えば後者かもしれませんが、芯がありました」

 今秋の活躍を教育的視点からこう見た。県大会、中国大会で優勝し、明治神宮大会は準優勝。来年1月の選抜選考委員会を経て、3年ぶりのセンバツ出場は当確の立場にある。

「選手の頑張りに感謝。指導スタッフの頑張りに感謝。校長、県高野連会長として、この秋の活躍ぶりは、率直に心からうれしいです。全国の公立高校の励みにもなると思います。昨年夏、今年の夏は県大会決勝で敗退し、あと一歩のところでした。荒谷監督は毎年、戦力の違いはありますが、夏にはしっかりチームを仕上げてくる。選手の一人ひとりを見ても、スター選手はいませんが、個々が与えられた役割をしっかりやっている。『広商で野球がしたい』という子どもたちが入学してくれるのは、私どもとしてもうれしい限りです」

 広島商高は「精神野球」が伝統としてある。荒谷監督は時代とともに、生徒の気質に合わせた指導を展開。折田校長も同様の考えだ。

「派手さはありません。まさしく、不易流行。継承すべきことはしっかりと伝え、変えていかないといけないことは変える。芯となるものは、持っておかないといけません」

 昨年5月、荒谷監督は「広商野球」についてこう語っていた。

「広商野球というのは、部員が多い少ない、野球が上手い下手ではなく、基本的に組織で戦う。教育活動の一環であり、今の時代だからこそ、勝ち上がることに意義がある。言い伝えられてきた『広商はこうあるべきだ』という軸の下、最後は子どもたちが考えて、実践するのが、広商野球。うまい選手よりも、強い選手になろうや!! と言っています」

 現場の思いは一緒である。

「令和の精神野球」の神髄


 横浜高との決勝は、序盤2イニングで4点のビハインドも、終盤の粘りで1点差にまでした。収穫多き準優勝。折田校長は言う。

「この秋は、ここまで勝たせていただいて、結果を出しても、反省する部分はたくさんあったと思います。荒谷監督は常に、選手に課題を気づかせる指導をしている。冬場のチーム内での競争を経て、来年には、メンバーも大きく変わってくるはずです。チームが勝つため、組織力のある集団を期待しています」

 今夏からレギュラーの主将・西村銀士(2年)は中学時代、練習見学した上で広島商高を志望した。その理由を「選手を中心として、練習を動かしている雰囲気」に惹かれたという。部員主導でチームを運営するのが「令和の精神野球」の神髄だ。広島商高は大正、昭和、平成、令和の四元号で全国大会勝利を挙げている全国7校のうちの一つ。今秋の明治神宮大会で新たな足跡を残し、来春へとつなげる。

文=岡本朋祐

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