一関学院が4-1で盛岡大付を破り、10年ぶりの頂点に立った。先発登板した右腕・菊池悠(3年)が3回1失点で流れを作り、サイド右腕・小綿大斗(3年)が6回無失点でリレー。3回表に3者連続適時打で3点を先制し、無失策など野手陣も投手を盛り上げた。昨秋に就任した高橋滋監督(48)にとっても初の夏采配で歓喜。8月9日開幕(宮城・石巻市民球場)の東北大会出場権も獲得した。

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最後の打者を二ゴロに打ち取ると、小綿は人さし指を立てて優勝をかみしめた。笑顔も見せずに投げ続けてきた表情を崩し、歓喜の輪の中心に。「甲子園がなくなってから、ずっと岩手県NO・1になるためにやってきたので、うれしかった。緩急をつけて焦らず、決め球も厳しいコースに投げられたことが良かった」。右打者の外角にスライダー、左打者にはチェンジアップ。最速135キロの直球から約40キロ遅い90キロ台前半のカーブまで操った。昨秋の県王者から、6回2安打3奪三振無失点。18個のアウト中、狙い通りに9個の飛球アウトを重ねた。

昨秋もエース格として県3位を導いた。東北大会も1勝。沼田尚志前監督を引き継いだ高橋監督とともに10年ぶりの甲子園出場を狙っていたが、3月に腰痛に襲われた。疲労が原因で、腰椎に内出血。5月中旬までは治療と静養。キャッチボールを再開した直後に甲子園中止の悪夢も襲った。「モチベーションが下がったけれど『治ってからでいいよ』と期待して待っていてくれた(高橋)滋先生や、支えてくれた仲間のためにも、期待に応えなきゃと思った」。練習試合では不調続きも、県大会に入って復調。「決勝で一番良い投球が出来て良かった」。今大会4戦登板で自責点0。自信も得て胸の金メダルを右手でグッと握り締めた。

卒業後は消防士を志す。盛岡市の自宅近くで火事を鎮める姿に小学生時代から憧れ続けた。「大斗」の名は「北斗七星のように大きく光る存在になってほしい」と願いを込めて命名された。母真希子さん(44)も「ケガが続いたり、甲子園がなくなったりしたけれど精神的には強くなった」と拍手を送った。

守備陣も2戦連続無失策。攻撃陣は同じく肘や腰のケガに苦しんできた近江博人外野手(3年)の中前先制打を皮切りに、10安打4得点で援護した。3年生29人全員が入れ替わりながら出場してつかんだ優勝。小綿は「東北大会でも自分たちがやってきたことを証明して、優勝したい」。本格的な野球生活最後の舞台で、一番の輝きを放つことを誓った。【鎌田直秀】

▽一関学院・佐藤颯弥主将(3年=10年ぶり優勝に)「入学したときから盛岡大付や花巻東を倒すためにやってきたので、最後の大会で勝ててうれしい。監督に優勝という形で恩返しできて良かった」

▽一関学院・佐々木春磨捕手(3年=7回の中前適時打など3安打に加え、2投手を好リード)「自分の役割は塁に出てチャンスメークしたり、小技です。上位を信じ、コンパクトに単打を意識した。昨秋の東北大会で負けている仙台育英にリベンジしたい」