*春の王者横浜が遂に負けた。サヨナラ負けの直後、ほとんどの選手がグラウンドに倒れ込んだ。春夏連覇に賭けた横浜高校の言葉にならない無念さを、痛切に見せつけられた。
この試合は序盤からどこか横浜らしくなかった。織田投手にもキレが感じられず、強力打線はことごとくいい当たりが野手の正面を突いた。逆に県岐商にはほとんど滅多打ちを喰らってるかのように、安打を献上した。それでもタイブレークまで粘ったのはさすがと思わせたのだが。。。
多くの人が指摘しているように、この初回の横山選手のファインプレーに大観衆が大いに湧いた。ここで奥村選手の打球が頭上を超えていれば、横浜がこれほど貧打で敗戦することにはならなかったかもしれない。
左手に先天性の障害を持つ横山選手は、王者横浜が相手であっても全く萎縮している様子がない。「試合の流れ」と観客を完全に県岐商に引き付けた大きいプレーであったと思う。
歴史に残る9回裏の横浜の内野5人シフトとピンチに動じない鉄壁の守備力。この試合大劣勢の横浜の連覇への執念と個のポテンシャルの高さを見せつけるものだった。
解説の元近江高校監督多賀氏も指摘していたが、惜しむらくは、疲労なのか緊張状態のためか、奥村投手は直球がほとんど高めに来ていた。最後の直球も打ちごろの高めだった。捉えられた打球がレフト前へ飛んで、2度目の春夏連覇を目指した横浜が散った。
奥村投手は、「(球場の雰囲気が)アウェーのような感じだった。その中で力を出せないと。全員が一体となっているのが、実力以上に怖かった部分かなと思います」と言った。アウエー状態の重圧が、彼のコントロールの精度を微妙に崩していたのは想像に難くない。
それで思い出すのは、2023年の決勝である。二連覇を狙う仙台育英もまた慶應義塾を応援する大観衆に飲み込まれた。県岐商の監督の言葉。「100回やったら99回は負けると思います。残りの1回が甲子園で出ました。」その1回は間違いなく大観衆の後押しによって達成されたものである。
現代の強豪校は、150km/hぐらいの速球なら十分対処しているので打つ。むしろ、コントロールと緩急で勝負する、力には力では対抗するのではなく、「頭脳と技」で勝負することが有効であることを物語っている。
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