*選抜ベスト4の浦和実業は、春の埼玉県大会初戦で聖望学園に敗れた。例の石戸投手が打ち込まれたのかと思いきや、彼はベンチに入れずスタンドで応援をしていた。選抜の疲労が蓄積していたとのこと。この石戸投手を含め、浦和実業には決して超高校級の選手がいるわけではない。練習風景からもごく普通の高校の部活動の感じが伝わってくる。それでも全国でベスト4だ。
その立役者と言ってもよい石戸投手に学ぶことは多い。まず彼は本能的に、ストライクゾーンの高低差、左右差を広く利用して、「打者の目の錯覚を利用する」ことに長けているとみる。言い換えると、「一つ前のボールの残像」を利用しているのである。ごくごく単純な一例を考えてみる。
1. 変速的なモーションから、高いリリースポイントで、直球をコーナー低めに投げる。初球のコーナー低めはまず手が出ないので、見送り1ストライク。
2. 次に、同じ高さのリリースポイントから、山なりに縦に割れるスローカーブを投げる。打者は、高いボールだと思っていたものが、ストライクゾーンに落ちてくるために、この高さに意識づけされる。見送り2ストライク。ただ打者は、高めに見えたカーブは、その軌道を追う時間があるので、よく引き付けて打とう、と考える。その時速差は20キロである。
3. 三球目、同じその高めが来た。良く引き付けてと思いきや、カーブでなく速球である。見送ればストライクかボールかギリギリの高さで、ストライクゾーンに落ちてくるカーブの残像があるので見送れない。120km/hの直球だが、完全に振り遅れている。どん詰まりの内野フライ。
この緩急のコンビネーションが幾通りもあって、打者は幻惑される。もちろんこれが機能するためのコントロールを兼ね備えている。これが石戸投手が屈指の好投手である所以だ。
果たして今年の夏、ノーシードの浦和実業が再び埼玉を制するか?あるいは花咲徳栄、浦和学院といった甲子園常連校が対石戸対策を用意してくるか?この夏は埼玉大会がもっとも注目なのは、衆目の一致するところである。
参照:江夏の21球
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