仙台育英が仙台城南を9-2で破り、5大会連続28回目の優勝を果たした。3回1死二、三塁から主将の湯浅桜翼内野手(3年)の犠打で先制に成功。さらに5回1死三塁でも、湯浅が左前適時打を放って追加点を挙げた。3位決定戦では昨秋王者の聖和学園が、東北学院榴ケ岡を8-1の8回コールドで下した。3校は14日から宮城県で開催される東北大会に出場する。

王座奪還にも主将の表情は厳しかった。長い冬は決して忘れない。昨秋の県大会準々決勝敗退から8カ月。湯浅は一切気を緩めることはなく「甲子園に行ける試合内容ではなかった」と最終回の失点や細かいミスを反省。「夏はひとつのミスが命取りになる。この優勝に満足せず修正したい」とかぶとの緒を締めた。

先輩たちが神宮大会やセンバツ出場で公式戦を重ねた一方、例年に比べて明らかに経験値は乏しい。須江航監督(41)も「持っている能力を出す力を育んでいる最中」とし「経験」をテーマに臨んだ県大会だった。さらに各試合にもテーマを設け、初戦名取北戦(9-0)では「さまざまなケースでのバント」、準々決勝東陵戦(3-1)では「今できる野球をミックスする『統合力』」、準決勝聖和学園戦(13-2)では「力で打開」、そしてこの決勝では「甲子園が懸かる夏決勝戦」。今一番必要とする貴重な経験を得た。

1年秋からメンバー入りする湯浅は、これまで何度も優勝を経験したが、主将としては初。「今は自分自身がやらないとチームが勝てない」と先輩の偉大さを改めて実感。前主将の山田脩也内野手(18=阪神)からは「日本一になれ」と背中を押されると同時に、険しい道の経験談に決死の覚悟でチームを率いている。2年連続の甲子園決勝進出に期待のまなざしを向けられる同校だが、どんなときでも「挑戦者」。夏の聖地へ向け、東北大会でも1試合でも多く貴重な経験を積む。【木村有優】