行くぞ甲子園


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08 May 2026

7回制についての意見

 *須江監督は何かと驚きを与えてくれる監督だ。全国制覇を成し遂げる程の名将であるのみならず、ある目的を持って環境(高校野球界)に「変化を促す」行動を率先して起こしている。高校球児にとって、「甲子園」が目的のほぼ全てになってしまっていることを、本人も痛切に知っているからこそ、このような思いやりの気持ちが生まれるのだろう。根底にあるのは、甲子園に恋い焦がれる選手を思いやる「心くばり」なのではないかと思う。

どんな弱いチームであっても、必ず一人や二人は本気で甲子園を目指している。
それほどまでに「甲子園」という言葉は、日本において特別な響きを持つ。
戦前から多くの観衆を引きつけ続け、戦後は復興期の娯楽として人々を支えた歴史を持つ甲子園は、単なる球場名を超え、日本人の生活に深く根付いた象徴となっている。
今や「甲子園」と言えば、それだけで高校野球を意味する存在である。

「高校野球は高校生のためにある」という前提に立脚するならば、指導者の義務は、その子どもたちの憧れの甲子園へ向けての努力をサポートすることであるし、健全で安全な日々の練習環境を整えて監視することであるはずだ。「甲子園はお前らには無理だ、身の丈に合わせろ」などという指導者は論外、「甲子園目指して最後の最後まで頑張ってみろ。俺がサポートする。お前らならやれる」と時にはハッタリでも良いから、選手をその気にさせて鼓舞してやるべきで、その点においても子どもたちを思いやる「心くばり」が求められるはずである。野球は子どものためにあるということは、つまりはそういうことではないだろうか。

7回制について私の意見を言っておきたい。あくまで個人的な意見なので誤解のないように。アメリカも高校生は7回制である。ただ、アメリカの高校は、全米大会もない、春のシーズンスポーツに過ぎず、ごくごく近隣の高校とリーグ戦を行なって、勝者がネクストステージに進む仕組みであるが、その最終ステージは州の大会である。日本にたとえるならば、県大会くらいで終わりという感じではないだろうか。アメリカ人の一貫した考えは、スポーツのメインは大学生以降で、「高校生はまだからだの発達途上であるので、決して無理をさせてはならない」というものである。全国大会は上記の理由により、開催の議論さえ起きない。ただし、野球のシーズンが終われば次はフットボール、バスケ、ホッケーなど数種の部活を掛け持ちしているのが普通で、その点で野球のみに全身全霊をかけている日本の高校球児とは根本的に異なる。

だからと言って、日本が何から何までアメリカの意見に追従するべきと言っているのではない。考えてみると、現行で推進されている高野連の改革はほとんど、歴史とともに確立されて来たスタイルを「ネガティブに変更しようとする」ものばかりではなかろうか?球数を制限する、延長はタイブレーク方式とする、なぜ、「野球は人気があるのに、一試合9回では短いから、15回制にしよう」とか、あるいは「一県一校の代表だけではあまりに狭き門なので、今後一県2校(予選の優勝、準優勝校)が甲子園へ出場できるようにしよう」、などという逆のポジティブな改革案が出てこないのだろう?

これだけ人気の高校スポーツは世界を見渡しても存在しない。考えてみれば不思議な話である。何か高校生の健康を慮って短縮、縮小傾向の改革ばかりであるが、旧来のスタイルで目に余る弊害が全国的に多発したのならばまだしも、そのような弊害は私の時代であってもあまり耳にしていないような気がする。

元来野球は、投手を除けばサッカーなどと比べても運動量の少い競技であり、現行の炎天下での試合を避ける、給水タイムを設ける、などの改革は、それが無い時代を過ごしてきた者にとっては、何か過保護的な、生ぬるい印象を残している感がある。バッティンググローブも、守備用手袋も、サングラスも、自打球用のプロテクターも、もっと言えば過度にテーピングするのさえ、昔はみんなNGだった。それらは悪い改革だと言っているのではない。それらは良い。自分らもゆるされるならば使いたかった。言いたいのは、今はそれらが全部許されている上に、9回を7回制にしようとする議論が起きているのは何故なのか?ということである。ここをきっちりクリアにしておかないと、単に大人の都合で試合時間を短縮したいだけなのではないのかとあらぬ疑義が生じるだろう。

日本とアメリカの高校野球の違いは何か?ズバリ「甲子園の文化の有る、無し」だろう。高校生の「その後の成長」を考慮するのも分かるが、甲子園以後の「その後」を目指している球児は正直どのくらいいるだろうか?ほとんどの高校球児が必死で求めているもの、それは「最後の夏に憧れの甲子園球場に立つ」ことだ。そのために3年間血の滲むような努力にも耐えられるのである。

日本の高校野球がこれだけ人気競技になった理由は、どう考えても「甲子園」の存在である。一度しか無い青春時代に、その大きな夢、聖地である「甲子園」がある。私立だろうが公立だろうが向かう方向は皆同じ、どこの高校球児でもその共通の夢の舞台を求めてすべてをかけて最後の決戦に挑む。不運にも負ければ、勝者に「絶対甲子園行けよ」とその夢を託す。これはむしろ素晴らしいことであるはずだ。

この「甲子園」がある日本で、わざわざ中学野球みたいに「7回制」にする理由は何もないのではないかと言うのが筆者の結論だ。少年野球は5回、中学野球は7回、高校野球から9回、きちんと子どもの成長を考えてこれまで日本はやってきたではないか。

ちなみに私はコールド制度も反対の立場だ。まして、7点差でコールドというのは、いくらなんでも早すぎる、7点差をひっくり返した試合はいくらでもあるではないか。7回制だと、3回コールドなどが設定されるのだろうか?

弱いチームでも野球をやりたいと頑張ってきた選手、連合チームしか組めずそれでも腐らずに練習してきた選手に、せめて最後の試合くらい野球の大前提のルールである「9イニング」を悔いがないようにやらせてあげたい、多くの打席を与えたいと考える方が、過度に選手の健康を心配したり、ある特定の才能を持った選手の「その後」を考慮して、一括りに試合を短くしてしまおうという短絡的な発想よりも、子供を思う本当の意味での温情を感じる。負ければ引退、その瀬戸際で子供らは戦っているのだ。7回にしようという意見がどこから出るのか不思議である。そこに本当の意味での心配りがあるのだろうか?

「その後」がある特別の選手の扱いは、そのチームごとに決めれば良い。本来球数制限もそうあるべきだ。その為に子供を管理する側の教育、監督、指導者の教育こそ高野連はもっと真剣に力を入れるべきではないだろうか。旧態依然の閉鎖的な空間ではなくて、ここに外部からの識者を積極的に呼んで子供の成長を含めた開かれた議論を活発に行い、安全対策を万全にする。

まず持って第一義に考えるのは、「甲子園」に全てをかけた過去がある野球人の意見だろう。甲子園が「ただの球場名」ぐらいに思っている外部識者の専門的な意見は、いくら説得力があるように見えても、この際二の次とすべきであると考える。

なんとなく、それが正しいような気がするのだが。



【高校野球7回制】仙台育英須江監督が小中高生500チーム超に独自アンケート調査「コロナの反省生かす」(スポニチ)




 高校野球で導入が検討されている7回制について、6月6日の意見交換会に出席する仙台育英(宮城)の須江航監督(43)が7日、本紙の独占取材に応じ、野球をする小、中、高校生らに独自アンケートを実施していることを明かした。既に500チーム超に調査を依頼し、7日現在で約300チームから回答があった。  現役監督らが参加する7回制導入を議論する意見交換会は30日、6月6日の2度、開催される。須江監督は2度目に出席予定。大切な議論に臨むにあたり、指導者講習会で構築した人脈などを生かした調査を進めている。  「私は賛成派でも反対派でもありません。高校野球は子供たちのためにある。だからこそ仙台育英の監督として意見交換会に出るつもりはなく、皆さんの代表として声をお伝えする役割として臨みたい。私が呼ばれた理由はそこにあります」と調査理由を説明した。  アンケートの中身は高校野球の7回制導入に「賛成か、反対か」、「理由」など4項目。少年野球、中学の軟式野球部やシニア、高校など関係者を通じて500チーム以上に依頼した。既に300チーム以上の回答があり、賛成10%、反対は90%に達し「合同チームや近年1、2回戦で敗退している高校も反対が多いことに子供たちの意思と熱量を感じます」と語った。  22年夏の甲子園で東北勢初優勝に導き、インタビューで発した「青春って、すごく密なので」は同年の新語・流行語大賞の選考委員特別賞を受賞。コロナ下で、満足のいく青春を送れなかった子供たちの共感を呼んだ。「7回制議論」では過去の“反省”を生かしたい思いがある。「コロナが拡大した時と一緒だと思うんです。いつも議論の中心に子供がいない。私たちはコロナから学んだはず。それが欠けていると思うので声を集めています。子供たちが“自分の人生は豊かだった”と思える未来を提供することが大人の役割」と語った。  日本高野連が設置した「検討会議」は「28年度から7回制採用が望まれる」と結論づけた。最終報告書を熟読した須江監督は「なぜ提案されているか、十分理解しています。お話しした際には日本高野連の皆さんも頭と心を悩まされていると感じました。気持ちは同じであると思います」と理解も示す。その上で最重視するのが球児の思い。「もっともっと声を届けてほしい。子供たちの忖度(そんたく)のない意見を待っています」と“小さな声”を集め、意見交換会に臨む。(柳内 遼平) ▽賛成意見  「公立校としては7回制の方が強豪私立校に勝機が出てくる」  「7回制の方が先行して逃げ切れる」 ▽反対意見  「現役高校野球選手の自分たちに、もっと考えさせてほしい」  「これから高校野球を目指す子供たちの声も聞いてほしい」  「7回制導入についての周知ではなく、(他の方法がないか)再議論をしてほしい」  ◇須江 航(すえ・わたる)1983年(昭58)4月9日生まれ、埼玉県出身の43歳。仙台育英では2年時から学生コーチで3年時に春夏の甲子園に出場。八戸大(現八戸学院大)でも学生コーチを務めた。06年から仙台育英の系列の秀光中の軟式野球部監督を務め、14年に全国大会優勝。18年1月から仙台育英の監督となり、22年夏に東北勢初の甲子園優勝。情報科教諭。 ▽7回制導入議論  日本高野連が昨年1年間かけて議論した「検討会議」では、熱中症対策などの観点から「28年度から7回制採用が望まれる」と結論づけた。ただ、日本高野連が加盟校を対象に実施したアンケートでは反対70・1%と現場からの反対意見も根強い。大阪市内で30日、6月6日の2度、「最終報告書」の内容について「意見交換会」が予定されている。 <意見交換会の出席者> 長島三奈(ファシリテーター=スポーツキャスター) ◎5月30日意見交換会 大坪慎一(鳥栖工監督) 川井圭司(同志社大政策学部教授) 木田圭重(京都府立医科大整形外科講師) 栗山英樹(日本ハムチーフ・ベースボール・オフィサー) 谷口真由美(法学者)西谷浩一(大阪桐蔭監督) ◎6月6日意見交換会 大石卓哉(掛川西監督) 大久保雅生(滋賀県高野連理事長) 小倉全由(日本高野連技術・振興委員) 琴浦義浩(舞鶴こども療育センター整形外科部長) 須江航(仙台育英監督) 谷本歩実(JOC理事)


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